医師に必ず課せられる「初期研修」が終わった後、医師は「それではこれ以降の進路はどのようにすべきか」を考える必要が出てきます。
本記事ではその「研修後の進路」の決め方をテーマに、下記内容を取り上げて解説していきます。
- 研修後の主な進路
- 進路が決めかねている場合の判断基準
- どうしても進路が決まらないときの対処方法
- 初期研修と後期研修で違う病院を希望することの意味
- 「進路を決めかねている」という医師からのよくある質問とその答え
進路が決まらず悩んでいる研修医はぜひ参考にしてみてださい。
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初期研修後の主な進路とは?
初期研修後の医師の選択肢は、さまざまです。ただ、その代表的な例として、以下の4つがあります。
- 大学病院で後期研修に入る
- 大学病院ではなく、市中にある病院(クリニック)で後期研修に入る
- 医学の研究者になるために勉強をし、博士号の取得を目指す
- 公衆衛生医などを目指す
大学病院は「学ぶための空間」であるため、医師としての勉強を積んでいきたいのであれば最良の選択肢のうちのひとつといえます。
市中にある病院で後期研修を受ければ、人事異動による転勤の影響を受けにくいというメリットがあります。
「研究者としての道を歩みたい」と考えるのであればさらに勉強を積むのもひとつの手ですし、母子保険などに特化した公衆衛生医の道もまた意味のある選択肢だといえます。
研修医(臨床研修終了後)の進路の割合
上記では、「初期研修終了後の選択肢」をいくつか提示しましたが、先輩医師たちは実際にはどのような選択肢を選んでいるのでしょうか。
厚生労働省が発表した「平成29年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」から解説していきます。
臨床研修修了後に勤務を希望する病院の割合
臨床研修終了後に、医師が勤務を希望する病院の割合は以下の通りです。
引用:厚生労働省「平成29年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」p37
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000182128.pdf
平成28年と平成29年では多少の違いはあるものの、全体の約50%~60%程度が、大学病院での勤務を希望していることが分かります。いずれの年でも女性の方が男性よりもこの傾向がわずかに多いといえますが、男女の差はそこまで顕著ではないといえます。
意外に思われるかもしれませんが、上で述べた「大学病院以外の病院(クリニック)の勤務」を希望する人も、毎年4割近くいます。そのため、「大学病院以外での勤務」もそれほどマイナーな選択肢だとはいえません。
ただし、病院以外を希望する人の割合は非常に少なく、年によっては0%のことさえもあります。
臨床研修終了後の入局予定割合
本章では、「医局に入る人の割合」について解説していきましょう。
引用:厚生労働省「平成29年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」p39
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000182128.pdf
表からも分かる通り、研修終了後に医局に入ることを希望している人は全体の75%ほどもいます。特に男性はこの傾向が顕著であり、平成28年も平成29年も90%近くをマークしています。そのなかでも、大学病院の場合はこの傾向が強く見られます。
医局への所属は、「異動を断り切れない」「過重勤務が起こりやすい」というデメリットがあります。しかし医局に所属した場合、医学博士への道がひらけやすく、専門医の資格も取得しやすい環境を作れます。これは次章の「専門医資格取得の希望割合」と合わせて考えるとより分かりやすいでしょう。
「医師としてキャリアを積んでいきたい」と考える人にとっては、「医局への所属」は非常にメリットが大きい選択肢だといえます。上記で紹介した表は、そのような医師の考えを反映したものだといえるでしょう。
専門医資格の取得希望割合
上で「専門医の資格の取得を考える人は、医局への所属を検討するのがひとつの有用な選択肢である」としました。ここからはこの「専門医」について取り上げます。
引用:厚生労働省「平成29年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」p42
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000182128.pdf“
原則として、専門医の資格を取得するためには2年間の初期研修+特定の診療科(内科や外科など19の診療科)での3年以上の研修期間を積むことが求められます。いわば専門医とは、「その領域・診療科目において、十分な経験と知識を有していると認められる医師」を指す言葉だといえます。
医師のキャリアアップを考えるうえでほぼ必ず出てくるこの「専門医」は、やはりその取得希望者も多く、90%を超える人が専門医の資格取得を目指しています。男女差はまったくないといってもよく、医師であるのならばほぼ全員が専門医の取得を志しています。
また、残りの1割程度も、「未定」「無回答」が大多数を占めており、「専門医になるつもりはない」と答えている人は2%にも達しません。
もちろん、先輩医師の選択は絶対的なものではありません。ただ、下記の事実を押さえた上で進路を決めるべきだといえるでしょう。
- 研修後に大学病院に所属することを考えている人は5割程度、ほかの病院(クリニック)を希望している人は4割程度
- デメリットも存在する「医局への所属」だが、今後のキャリアを考えて、この選択肢を取る人は多い
- ほぼすべての医師が、専門医の資格取得を目指している
進路が決まらない研修医は何を基準に決めるべきか
本章では「それでは実際に進む進路を決めるためには、何を基準にしたらよいのか」について解説していきます。判断基準は人によって異なりますが、迷ったのならば、下記のいずれかを基準に進路を選ぶようにするとよいでしょう。
- 興味のある専門分野を選ぶ
- 求めるライフスタイルで選ぶ
- 求める収入で選ぶ
- 自分の持っているスキルで選ぶ
初期研修で興味をもった専門分野を選ぶ
一口に「医師」といっても、勤務状況はさまざまです。特に週当たりの勤務時間は、科によって大きな違いがあります。厚生労働省がまとめたデータを見ると分かりやすいでしょう。
引用:厚生労働省「都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数の見通し(たたき台)」p19
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000483701.pdf
上記のデータからwカルト折、皮膚科や眼科などは週当たりの勤務時間が短い傾向にあります。週当たりの勤務時間が43.5時間程度ですから、ほぼ「1週間に5日、8時間勤務」の状況にあります。
対して、もっとも忙しい科である救急科の場合は、週当たりの勤務時間が62時間を超えています。1週間の勤務日を5日間とした場合、1日の勤務時間は実に12.4時間にも及びます。
「プライベートの時間を大切にしたい」と考えるか、「仕事をメインに過ごしたい」と考えるかで、選ぶべき科は変わってきます。
求める給料によって選ぶ
医師はほかの職業と比較して、平均年収が高いことで知られています。たとえば下記で取り上げるデータによれば、どの科目も平均年収が1000万円を切ることがないと示されています。
引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」p30
https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
ただ、このデータを見ていくと、「科ごとで平均年収に差が出ること」も分かります。たとえば脳神経外科や産科・婦人科は1500万円に手が届きそうな一方で、眼科や皮膚科などは1100万円にも達しません。
また、上記で「1週間当たりの勤務時間がもっとも長い」とした救急科も、その収入は1200万円程度です。つまり、1週間当たりの労働時間と年収は必ずしも比例するわけではありません。
「年収で進路を選ぶ」というやり方は、非常に有用なものです。ただその科の忙しさを考慮する必要はありますし、データによって数字が違うことも押さえておくべきでしょう。
自分がもっているスキルや能力を活かせる選択肢を選ぶ
「医師免許を取得して研修医になった。学んでいくうちに、自分にとっての得意・不得意が分かってきた」という人は少なくはありません。研修医時代は複数の科目を周り、基礎を習得していくことになりますから、そのなかで自分の特性を知ることになるでしょう。
もちろん、研修医時代に感じた得意・不得意は絶対的なものではありません。修練を積んでいくうちに「不得意」が「得意」に変化することは十分に考えられます。
ただ、「どの科に行くべきか決めかねている」「関わった先輩医師の多くから、外科向きだと言われた」などのような場合は、研修医時代に「得意」だった科に進んでみるのもひとつの手です。
どうしても初期研修後の進路が決まらないときの対処方法
「上記の判断基準で考えても、どうしても進路が決まらない」という場合もあるでしょう。そのようなときは、下記の方法を試してみることをお勧めします。
自己分析を改めて行う
まずは、改めて自己分析を行ってみましょう。「自己分析」とは、「得意・不得意」を洗い出すことだけを指すのではありません。
「なぜ自分はそもそも医師になりたいと思ったのか」「一人立ちした後に、どのような医師になりたいのか」などの内面的な問いかけを行うことが非常に重要です。
このような自己分析を繰り返すことで、「本当に自分が歩みたかった道」が見えてくることも珍しくありません。
メンターや先輩医師に相談する
指導してくれた医師や、一緒に働いていた先輩医師に相談するのもひとつの方法です。彼らは医師としての長い経験があり、また同じように「研修医時代(とその後の進路決め)」を体験してきた人たちでもあります。
「今後の進路について悩んでいる」と相談すれば、多くの先輩方は時間をとって、後輩医師の相談に乗ってくれることでしょう。
またこのときに先輩医師から、「あなたは○○の科に向いていると思う」などのような意見を聞くこともできるかもしれません。
医師に特化した転職・就職エージェントに相談する
「もっと客観的な意見が聞きたい」ということであれば、思い切って転職・就職エージェントに相談してみるのもよいでしょう。
転職エージェントは、第三者の視点から冷静に一人ひとりの医師を見ます。また転職エージェントは、転職・就職活動を導くキャリアの専門家でもあるため、一人ひとりのなかにあった言語化しきれていない転職・就職の希望を洗い出すことも得意です。
「何を基準に就職先を決めればいいかわからない」「自分が重要視している希望条件が何かがわからない」という人は、特に転職エージェントとやり取りをすることが望ましいといえます。
進路が決まらない研修医におすすめの医師専門の転職・就職エージェント
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エムスリーキャリア
エージェント名 | エムスリーキャリアエージェント |
求人数 | 公開求人:45,489件 非公開求人:- (2024年11月14日現在) 今の求人数:公式HP参照 |
対応雇用形態 | 常勤・非常勤 |
対応診療科目 | 内科全般・外科全般・ほか小児科や産婦人科、耳鼻咽喉科や眼科など |
対応エリア | 全国 |
拠点 | 東京都港区虎ノ門4-1-28虎ノ門タワーズオフィス |
公式HP | https://agent.m3.com/ |
エムスリーキャリアエージェントは、32万人以上の会員を有する非常に大きな転職・就職エージェントです。特に関東圏の求人情報に強く、この地域で就職を考えている医師の強い味方になるでしょう。
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エージェント名 | 医師転職ドットコム |
求人数 | 常勤医師求人:28,771件 非常勤医師求人:23,000件以上 非公開求人:20,000件以上 (2024年11月14日現在) 今の求人数:公式HP参照 |
対応雇用形態 | 常勤・非常勤 |
対応診療科目 | 内科全般・外科全般・ほか小児科や産婦人科、耳鼻咽喉科や眼科など |
対応エリア | 全国 |
拠点 | 北海道札幌市中央区北1条西5丁目2番地興銀ビル9F(本社) |
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臨床研修地と、勤めたい勤務地の関係
臨床研修を受けた土地で働きたいか、それとも別の土地で働きたいかのアンケート結果では、全体の75%程度が「研修地で働きたい」と答えています。
引用:平成29年臨床研修修了者アンケート調査結果概要
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000182128.pdf
これは、臨床研修を受けた土地が自分にとって慣れた土地であることが多いからだと推測されます。
なお、女性と男性では女性の方がややこの傾向が強い傾向にありますが、その数値差はそれほど大きいものではありません。
進路が決まらない研修医からよくある質問
最後に、「進路が決まらない!」と悩んでいる研修医から寄せられる、よくある質問と、その答えを記していきます。
研修医に人気の診療科は?
研修医にもっとも人気の高い科は、「内科系」です。研修前では全体の3分の1の人が、「内科系を希望する」としています。
時点は「外科系」で、これが11.4%です。それ以外の科は5.0%を超えません。なおこの数字は、研修後であってもそれほど大きくは変わりません。
引用:平成29年臨床研修修了者アンケート調査結果概要
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000182128.pdf
研修制度はどう変化したか
医師の研修制度は、時代によって変わります。近年では2020年に改訂が行われていて、この改訂で、「研修医は原則として7科目で研修を積まなければならず、またそれぞれの科においての研修期間の最低週を定める」とされました。
内科では24週、救急では12週の研修が求められるほか、外科・小児科・産婦人科・精神科および地域医療では4週以上(理想は8週以上)の研修が求められます。
これをクリアしようとすると、最低でも1年4か月、理想の研修数をクリアしようとすれば1年9か月が必要です。
後期研修医の期間は?
上でも解説しましたが、後期研修の期間は原則として3年間です。なお、このときは特に「専攻医」という呼び方で呼ばれます。
基本領域である19の科から1つを選び、3年間にわたってその研修をしていくことになります。そしてこの3年間の研修中に論文などを出し、試験をクリアすることで「専門医」になれます。
このような仕組みであるため、現在は、「医師の後期研修期間は、専門医になるための過程である」と解釈されることが多いといえます。
専門医になるには何年かかる?
「専門医」は、医師のキャリアを分かりやすく示すものであり、ほとんどすべての医師が目指す関門であるといえます。この専門医になるためには、高校卒業後、最低でも11年の時間が必要です。
18歳……高校を卒業し、医学部に入学
18歳~24歳……医学部で学ぶ
24歳~26歳……初期の研修を受ける
26歳~29歳……後期の研修を受ける
29歳……研修期間に論文などを出し、また筆記試験に合格することで、専門医になれる
もちろん、「医学部受験に落ちて浪人した」「進級できなかった」などのような状況になれば、専門医になるまでの必要期間はもっと長くなります。
医師が一人前になるまで何年かかる?
何をもって「一人前の医師になった」と判断するかは、個々人によって異なります。上記でも取り上げた「専門医」をひとつの区切りとする人もいますが、「10年以上経ってから初めて一人前になったと感じた」という人もいます。
また、1740人を対象としたアンケートでは、「まだ一人前になっていないと感じる」と答えた人がもっとも多く、全体の40%近くがこれにあてはまっていました。
医師という職業は、一生勉強を続けなければならない仕事でもあります。このアンケート結果は、それを分かりやすく表しているものだといえるでしょう。
出典:医師転職ドットコム「医師にとって「一人前」とは?医師1,740名へのアンケート結果より」
https://www.dr-10.com/lab/fullfledged-doctors/
進路が決まらない研修医は医師専門のキャリアアドバイザーに相談しよう!
「研修医期間中だが、その後の進路を決めかねている」「医師免許をとったが、将来進むべき道について迷っている」という人は、まずは自己分析をしっかりと行うことが大切です。先輩医師などにアドバイスを聞くのも参考になるでしょう。
また、「もっと客観的な意見が欲しい」「『転職・就職』の専門家の見解を知りたい」などのように考える場合は、エムスリーキャリアエージェントなどに所属する医師専門のキャリアアドバイザーに相談してみてください。
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