障害者の転職はどれくらい難しい？現状や理由・成功するコツを解説

障害者の転職は、一般的な労働市場と比べて多くの課題が伴います。企業側の受け入れ態勢や社会的理解の不足、個人のスキルや体調面での課題など、さまざまな要因が絡み合っているのが現状です。

本記事では、障害者の転職が難しい理由や現状を詳しく解説します。さらに、転職に成功するための具体的なコツや成功する人の特徴も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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障害者の転職はどれくらい難しい？現状を解説

障害者の転職はどれくらい難しいのかについて、厚生労働省が発表しているデータに基づいて詳しく解説します。

障害者の就職率は44.4%と狭き門

令和5年（2023年度）の厚生労働省の統計によれば、障害者全体の就職率は44.4%という結果が示されています。障害者の2人に1人が就職できておらず、一般的な労働市場と比較するとかなり低い水準です。

これは、企業側で障害者を受け入れるための環境整備が不十分であることが理由として挙げられます。また、社会全体で障害者雇用に対する理解や支援が十分でないことも課題です。

企業による受け入れ態勢の強化や、社会的偏見を解消する取り組みが求められています。

参考：厚生労働省｜令和5年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します

民間企業の法定雇用率は2.5%と就職しやすくなっている

障害者の就職率はまだまだ低い一方、障害者が安定した職場環境で働けるようにするための仕組みも設けられています。

なかでも「法定雇用率制度」とは、障害者が安定した職場環境で働けるようにするための重要な制度です。障害者の雇用促進を目的とした「障害者雇用促進法」に基づき、従業員数に応じて一定割合の障害者を雇用する義務を負います。

2024年4月からは、民間企業の法定雇用率が2.5%に引き上げられており、従業員40人以上を雇用している事業主は少なくとも1人以上の障害者を雇用することが求められています。

2026年度にはさらに引き上げられ、2.7%となる予定です。障害者の転職市場はより活性化していくと考えられています。

参考：厚生労働省｜障害者雇用のルール

障害者の転職が難しい理由

障害者の転職が難しい理由として代表的なのは、以下の3つです。

それぞれ具体的に解説します。

障害への自己理解が不足しているため

障害者の転職が難しい理由の一つに、自身の障害への理解不足が挙げられます。

障害への自己理解が不足していると、自分に適した職種や業務環境を見極めることが難しいためです。面接時や採用後に企業側へ適切な配慮を求めることも難しくなるでしょう。

また、障害への理解が浅いと自分の強みや弱みを正確に伝えられないため、企業側もその人材をどのように活用すればよいか判断できません。

そのため、「何ができて何ができないか」「どんな支援があれば仕事を遂行できるか」を具体的にすることが大切です。専門家や支援機関と連携しながら、自身の障害特性や必要な配慮について整理するとよいでしょう。

スキルや経験が不足しているため

障害者の転職が難しい理由には、スキルや経験の不足も挙げられます。

とくに前職が障害者雇用枠だと、業務内容の簡易化によってスキルアップの機会が限られるケースも珍しくありません。転職時に「前職で何を学んだか」をアピールしづらくなるという悪循環が生じる可能性があります。

また、多くの企業が転職希望者に即戦力を求める傾向があることも理由の一つです。スキルや経験が十分でなく即戦力としての活躍が見込まれなければ、採用のハードルはあがるでしょう。

障害者が転職に成功するためには、自身のスキルセットを見直し、不足している部分を補う努力が必要です。

自治体や就労移行支援事業所が提供するトレーニングプログラムに参加するなど、実践的なスキルを身につける努力を欠かさないようにしましょう。

体調や精神面での安定性が欠如しているため

障害者の転職が難しい理由として、体調や精神面での安定性が欠如していることも考えられます。なぜなら、企業の採用担当者から「リスク」と捉えられることがあるためです。

例えば、症状が悪化・再発することで、仕事を継続することが困難になるケースも珍しくありません。症状が悪化・再発した際に適切な環境を提供できるだけの配慮が十分に整っている企業は少なく、症状が安定していない人材を採用しにくいのが現状です。

そのため、まずは体調の安定を優先し、主治医と相談しながら治療やリハビリに専念することが重要です。就労移行支援施設やリワークプログラムなどを活用し、職業準備性を高めることも効果的でしょう。

障害者を不採用にする企業によくある理由

障害者の転職が難しい理由には、企業側の理由も考えられます。障害者を不採用にする企業によくある理由は、以下の通りです。

それぞれ、順を追って解説します。

受け入れ体制が整備されていないため

障害者の転職が難しい背景の一つに、企業の受け入れ体制が十分に整備されていないことが挙げられます。

実際、職場環境や業務体制の不備が原因で、障害者が十分に能力を発揮できていない企業は珍しくありません。

とくに中小企業はリソースが限られているため、「障害者雇用に必要な職場環境や指導体制を整えることが困難」と感じる企業は数多く存在しています。

障害への理解が不足しているため

障害者が転職活動において不採用となる理由に、企業側の「障害への理解不足」も考えられます。

障害者がどのような特性を持ち、どのような配慮が必要かを理解していなければ、適切な業務内容やサポート体制を整えて採用に踏み切ることができません。

実際、何をどこまで配慮すべきかが分からず、「コストがかかる」「他の従業員に負担がかかる」などの誤解から採用をためらう企業は多いです。

障害者の職場定着率が低いため

障害者を不採用にする理由の一つとして、職場定着率の低さも挙げられます。

障害者職業総合センターのデータによると、障害者の入社1年後の職場定着率は以下の通りです。

身体障害者	60.8%
知的障害者	71.5%
精神障害者	49.3%

厚生労働省の調査で一般的な大卒者の入社1年後の職場定着率が約90%とわかっていることからも、障害者の定着率の低さが伺えます。

採用後の離職リスクを懸念し、障害者を不採用にする企業は少なくないでしょう。

参考：障害者職業総合センター｜障害者の就業状況等に関する調査研究
参考：厚生労働省｜新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します

障害者が転職活動で受かるには？成功させるコツを解説

障害者が転職活動で受かるにはどのように対策すべきか、成功させるコツを解説します。

それぞれ、詳細に解説します。

自分の障害特性を理解する

障害者が転職活動を成功させるためには、まず自分自身の障害特性を正確に理解することが重要です。自己理解が不足していると、適切な職場選びや必要なサポートを受けることが難しくなるためです。

例えば発達障害の場合、注意欠陥・多動性障害（ADHD）では「不注意」や「多動性」、自閉症スペクトラム（ASD）では「コミュニケーションの困難」など、それぞれ異なる特性があります。転職を成功させるためには、特性を理解し、自分に合った職場環境や業務内容を選ぶことが欠かせません。

また、自分の障害について理解するだけでなく、採用担当者に適切に伝えるスキルも必要です。「どのような仕事を避けるべきか」「どのようなサポートがあれば働きやすいか」を具体的に説明することで、企業側からの合理的配慮を受けやすくなるでしょう。

無理のないスケジュールで転職活動を進める

障害者が転職活動で成功したいなら、無理のないスケジュール管理も欠かせません。無理をすることで体調悪化を招き、結果的に転職活動が長期化するリスクがあるためです。

とくに、通院やリハビリが必要な人、体調に波がある人は、日々の生活と転職活動を両立させるためにスケジュール管理が不可欠です。

応募書類の作成や面接準備に時間を割く際も、体調を最優先に考え、無理のないペースで進めましょう。

障害者雇用枠を活用する

障害者が転職活動を成功させるためには、「障害者雇用枠」を活用することも選択肢の一つです。

障害者雇用枠とは、障害者手帳を持つ方を対象にした採用枠のことです。事前に障害について開示できるため同僚や上司からの理解が得られやすく、精神的な負担を軽減しながら働けます。

また、障害者雇用枠は法定雇用率を満たすために特別に設けられており、一般採用枠に比べて競争率が低い傾向があることも嬉しい点です。障害があっても、採用される可能性を高められるでしょう。

障害者雇用については以下の記事も参考になります。気になる記事があればチェックしてみてください。

支援機関のサポートを利用する

障害者が転職活動を成功させるためには、支援機関のサポートを受けることもおすすめです。支援機関なら、障害者の特性に合わせた内容で、就職活動から職場定着まで一貫した支援が受けられます。

例えばハローワークでは、障害者向けの専門窓口を設置しています。専門知識を持つ相談員が個別対応を実施しており、履歴書や職務経歴書の作成支援、模擬面接の実施、求人紹介などを受けることが可能です。

また、就労移行支援事業所では、一般就労を目指す障害者に対し、必要なスキルや知識を習得するための訓練を提供しています。ビジネスマナーやパソコンスキルなどの基礎的なトレーニングから、特定の職種に特化したプログラムまで幅広いスキルを身につけることが可能です。

障害特性に合わせた業務内容の求人を選択できるため、転職成功の可能性を高められるでしょう。

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得意分野・業界	身体障害、発達障害、精神障害など 障がい者手帳を持つ方対象とした就職支援
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転職エージェントに登録しサポートを受ける

障害者の転職を成功させるコツとして、転職エージェントに登録してサポートを受けることも挙げられます。転職エージェントは、求職者の自己分析から書類・面接対策、条件面の交渉までを一気通貫で行うサービスです。

障害を持つ方が転職を成功させるには、面接対策を通じて自分をアピールする方法を工夫することが重要です。転職エージェントを利用すれば、自分の強み・弱みをどのように伝えるか、自己PRで何を話すべきかなどをレクチャーしてもらえます。

「障害が原因で転職できないかもしれない」と不安を抱えている方は、一人ひとりの事情に寄り添って転職成功まで伴走する転職エージェントを活用しましょう。

転職を成功させたい障害者の方におすすめの転職エージェント

転職エージェントとひと口にいっても、各サービスによって強みは異なります。障害者の転職に強みを持つ転職エージェントを選ぶことが、重要です。

障害者におすすめの転職エージェントについて詳しく解説します。

dodaチャレンジ

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dodaチャレンジは、dodaのなかでも障害者の転職・就職支援に特化したサービスです。障害者雇用を進めている約3,000社との取引実績があり、さまざまな業界・業種の求人を有しています。

dodaチャレンジの魅力は、障害者の事情に親身になって寄り添ってくれるアドバイザーが多いことです。アドバイザーは転職希望者が持つ障害を理解してカウンセリングするだけでなく、症状を企業へ正しく伝える方法もレクチャーしています。

そのため、dodaチャレンジを利用すれば「自分の症状がうまく伝わらなかったことが原因による不採用」など、障害者の転職で多くある失敗を防げるでしょう。

▼dodaチャレンジの口コミ

引用：dodaチャレンジ

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障害者雇用と一般雇用の違い

障害者雇用と一般雇用には、応募条件や職種、給与水準、職場環境などに明確な違いがあります。主な違いは、以下の表の通りです。

項目	障害者雇用	一般雇用
応募条件	障害者手帳の所持が必要	企業の条件を満たせば誰でも応募可能
対象者	・身体障害者 ・知的障害者 ・精神障害者	制限なし
職種の幅	限定的（事務職や軽作業が中心）	幅広い（専門職も含む）
給与水準	低め	高め
配慮の有無	障害に配慮された環境	配慮は基本的にない

障害者雇用は、原則として「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」などの障害手帳を所持している人が対象です。一方、一般雇用は障害の有無に関係なく、企業が提示する条件を満たせば誰でも応募できます。

また、障害者雇用は事務作業や軽作業など比較的負担が少ないものが中心で、専門性の高い仕事は少ない傾向があります。一方、一般雇用は専門性の高い職種から管理職まで幅広く選択できるため、キャリアアップや高収入を目指しやすい点が特徴です。

障害者雇用は配慮された環境で働ける一方で職種や給与面で制限があり、一般雇用は選択肢が広く高待遇を得られる可能性がある一方で配慮がないため働き続けるハードルが高くなります。

それぞれ一長一短があるため、自分の特性やキャリア目標に応じて適切な枠を選ぶことが大切です。

障害者雇用で採用されやすい人の特徴

障害者雇用で採用されやすい人の特徴は、主に以下の3つです。

それぞれ、具体的に解説します。

志望動機と自己PRが具体的

障害者雇用枠で採用されやすい人の特徴として、志望動機や自己PRが具体的であることが挙げられます。

企業が人材を採用する際は、応募者のスキルや経験だけでなく「なぜその企業を選んだのか」「どのように貢献できるのか」も重視するためです。志望動機や自己PRが具体的なら、採用担当者に対して熱意や適性を効果的に伝えられ、採用の可能性を高められるでしょう。

志望動機や自己PRを作成する際は、企業の取り組みや方針で共感した点を交えながら、自身の強みや経験を具体的なエピソードとともに伝えることが効果的です。また、自己PRで自分が苦手な点や必要な配慮についても正直に伝えることで、企業側が適切なサポート体制を整えやすくなるでしょう。

健康管理や生活リズムが整っている

障害者雇用において、健康管理や生活リズムを整えることは非常に重要です。企業は安定して働ける人材を求めているため、規則正しい生活習慣を送って体調が安定しているかどうかもチェックしています。

「規則正しい生活習慣のおかげで体調は安定しており、フルタイム勤務も可能です」とアピールすることで、採用担当者からの信頼を高められるでしょう。

そのためにも、決まった時間に就寝・起床し、1日3食をきちんと摂ることが大切です。また、毎日決まった時間に家を出て通勤のシミュレーションもしておくことで、採用後も長期的に働き続けられる基盤を作れるでしょう。

長期的な勤務意欲がある

長期的な勤務意欲を持つ人も、採用されやすい傾向があります。

障害者は一般的な大学卒業者と比較して離職率が高いことから、企業は長期間働いてくれる人材かどうかに不安を感じているためです。長期的に働く医師を示すことで採用担当者に安心感を与え、採用の可能性を高められるでしょう。

長期的な勤務意欲を示すためには、自身のキャリアプランを明確にして企業への貢献意欲を伝えることが大切です。志望動機や自己PRの中で、自分がどのように企業で成長し、どのような形で貢献できるかを具体的に説明するとよいでしょう。

障害者の転職活動でよくある質問

障害者雇用で不採用になる理由は？

障害者雇用において不採用となる理由は多岐にわたりますが、大きく以下の3つが挙げられます。

自己理解が不足している場合、企業側は「どのような配慮が必要か」「業務にどの程度影響があるか」を判断できません。「どのような業務が難しいか」や「普段からどのような工夫をしているか」を具体的に伝えることが重要です。

また、体調管理が不十分で生活習慣が整っていない場合も、不採用の理由となることが多いです。「どのような状況で体調を崩しやすいか」「どのような対策を講じているか」を説明できると、企業側も安心感を持ちやすくなるでしょう。

さらに、配慮事項について過剰に要求したり、曖昧に説明したりすることも、不採用につながる要因です。企業側にも限界があるため、配慮事項は最低限必要なものだけを伝えることが望ましいでしょう。

障害者雇用が難しい業種は？

障害者雇用が最も進みにくい業種は、「情報通信業」です。2021年の厚生労働省のデータでは、法定雇用率達成企業の割合が26.3%と最も低い結果となっています。

また、研究や技術開発など高度な専門性を要する仕事が中心な「学術研究・専門・技術サービス業」も障害者雇用が難しい業種です。法定雇用率達成企業の割合は、33.2%にとどまっています。

「情報通信業」や「学術研究・専門・技術サービス業」は高度なスキルや専門知識が求められることが多く、障害者に適した職務を見つけることが難しいことが原因です。

職場環境の整備も十分とはいえず、障害特性に応じた配慮が行われていない企業が多いことも課題となっています。

参考：厚生労働省｜令和2年 障害者雇用状況の集計結果

障害者の雇用が進まない理由は何？

障害者の雇用が進まない代表的な理由として、 職場環境の整備不足が挙げられます。

例えば、バリアフリー化されていない建物や、障害者に適した設備が不足している場合、身体的な障害を持つ人々が安心して働ける環境を十分に提供できません。

加えて、企業内で障害者雇用に関する理解や知識が不足していることも大きな問題です。管理職や上司が障害特性を理解できておらず、どのように接し、どのような業務を割り振ればよいか分からない場合があります。

さらに、障害者は「生産性が低い」「業務遂行能力に欠ける」などの偏見や誤解があることも理由の一つです。適切な業務配分ができるように社内で障害特性について学ぶ機会を設け、多様性ある職場環境づくりを目指すことが重要になるでしょう。

まとめ

本記事では、障害者の転職が難しい理由や現状について詳しく解説しました。

障害者の転職は、就職率の低さや企業側の受け入れ態勢の課題、スキル不足や体調管理の難しさなど、さまざまな要因から難しい現状があります。

しかし、法定雇用率の引き上げや支援機関の活用、自身の障害特性を理解して適切に伝える努力などによって、転職成功の可能性を高めることが可能です。

障害者雇用枠や支援機関を積極的に活用し、ぜひ自分に合った職場環境を見つけて転職してみてください。